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河原 知子さんの部屋 | 2024年 4月活動報告書

4月 穀雨 こくう 霜止出苗 しもやみてなえいずる

 桜があっという間に散って、木蓮(モクレン)や、コブシ、レンギョウ、雪柳(ユキヤナギ)、その他にも名前も知らないさまざまな花がなんとも賑々しい季節になりました。

美しい村づくり委員会

今月の美しい村づくり委員会は、がんばる地域補助金の申請がありました。申請団体は村の読み聞かせボランティア夢風船さん。対象事業内容は『戦後80年「せんそうとへいわ」』です。夢風船さんから事業説明などプレゼンが行われ、その時に夢風船の6が村の戦争体験者の手記を朗読なさったのですが、よく通る声で語られる、その内容の重さに圧倒されました。 

若い青年が国のため、家族や故郷のためにと誇りをもって出兵していく心境。戦地に到着し目の当たりにした戦争の悲惨さと無意味さ。自分がしている残虐な行為に恐れおののきながらも、それに慣れ、心がまひしていく悲しさ。そして故郷と家族への思い。それらが綴られた文章には、苦境の中でも才気煥発という言葉がふさわしい力と輝きがありました。この時読まれた手記を読み返すと、知性と感性に優れた、若い、本当に若い方だったのだと、言葉にならないものがこみ上げてきます。この手記の方は、戦地で亡くなっています。ですが、この方の書いた手記は村に帰ってきました。どんな状況であろうと、生きているということはそれだけできらきら輝いてエネルギーを放っている、と感じる文章は生命力にあふれていて、生と死のコントラストの激しさにめまいがしました。

私は地域おこし協力隊の最初の年、村の戦争について興味を持ち、村の方の戦争体験の文章をいくつか読ませていただきました。その時ふと思ったのですが、戦後80年ということは戦時中成人していた方は今100歳を超えています。第二次世界大戦下の日本の兵役は17歳から40歳。つまり戦地に行ったことがある方は、一番若い方でも現在97歳ということになります。人間の寿命はどんなに長くとも100年とちょっと。あと数年もすれば当時兵士として戦地に立った方は、誰もいなくなります。

私が通っていた大学には、さまざまな国から学生がやってきていました。特に韓国、中国、台湾の学生が多くいて、時折国家間の政治的な摩擦が学生たちの人間関係に影響を与えていました。その国家間摩擦の最たるものが第二次世界大戦の事でした。私も台湾人留学生に第二次世界大戦時の日本兵の行いに対する謝罪を求められた事や、韓国人の友人と慰安婦問題について夜通し話し合った事があります。もちろん答えが出る話題ではなく、誰が正しいわけでもありません。私は当時、自分が感じたこと、考えたことを彼らに話しました。あれから時が経ち、あの時言った言葉と、今の私の考えは少し変化していると思います。

3年前祖母が亡くなった時、姉の子供はまだ0歳でした。お葬式の時に、棺の中の祖母を「ひいおばあちゃんだよ。」と姉が甥に見せていたのを見て、私は「この子は、『戦争を知る人』を知らない世代」なんだなとふと思いました。
学生時代、私と戦争について話した台湾や韓国の方々は、近しい親族、祖父や祖母から戦争体験を聞いて育っていました。彼らは憎しみや悲しみを祖父母と共有し、共感していたため、日本という国に対する思いも引き継いでいました。今、学生をしている世代の方々は、私の甥と同じように戦争を知る近しい親族がいない人が多いのではないでしょうか。そのためか、昨今の若い世代の国家間摩擦は私の上の世代や私の頃より、ずっと少ない印象を受けます。
先入観で自国や他国を判断しない事を、私は非常に重要なことだと考えています。しかし、先入観がないことが戦争についてあまり知らないこととイコール(=)だとしたら、それは危ういのではないでしょうか。誰から、どこから、どういった解釈で何を語るかで、戦争の見方、感じ方は大きく変わります。「正しい知識」というのは、国によって、人によって全く違うものでしょう。これからの「戦争を知っている人を知らない」世代に必要なのは、「正しさ」を求めることではなく、なぜ戦争が起こったのか、どうしたら戦争のない世の中になるのかを、さまざまな情報を自分自身の目と耳で調べ、さまざまな方向から読み取り、整理し、違う意見や価値観を持った人の話を聞き、自分の考えを相手に伝えるという、対話していく力なのだと思います。これは戦争の話に限らず人と人が関わっていく中で必要不可欠な技術です。これから先、世界中のさまざまな地域で、いろいろな人と関わりあって活躍していく世代の方々にとって、戦争について学ぶことは未来につながる大切な力になっていくのではないでしょうか。

「新たな段階に入った“戦後”」と、夢風船の方々がプレゼンでおっしゃっていたのですが、この言葉は、本当にさまざまな意味での変化を含んでいると感じました。今年で戦後80年。戦争を知る方々は年月が経つにつれ少なくなっていきます。戦争のない世界をつくっていくために、どうやって戦争を語り継いでいくのか。あまりにも価値観、環境の異なる時代をどう解釈していくのか。
「戦争を知る人を知っている世代」として、戦前、戦中の方々の生の声を聴いた私たちができることは何なのか。戦争について知ろうとすることは、自分の役割を自分に問う機会になると思います。

読み聞かせボランティア夢風船さんの『戦後80年「せんそうとへいわ」』事業は今年度分の活動が、がんばる補助金の申請を通りました。第一回目のイベントが6月28日に中学校で、29日にはなのき別館で一般向けに開催されます。皆様のご参加お待ちしております。

美しい村づくりだより

今月も自治会長配布に私が書いた『美しい村づくりだより』を入れさせていただいております。毎月、たよりの挿絵に村で咲いていた花などをよく描かせていただいているのですが、今月は山でよく見るけれど名前の知らない花をいくつか描かせていただきました。第7回暦くらす「山の記憶散歩会‐初夏、暮らし編‐」の準備で、村CATV(ローカルテレビ)の新番組、「東白川あっちべたこっちべた」の山の案内人の方と一緒に山を巡りつつ、この時期山でよく見かける名前の知らない花々について調査したその時の花です。まず、桜が咲く前頃によく見かけたコブシによく似た花は、タムシバです。薄緑がかった黄色の花房はコウヤミズキ、それとよく似たキブシ、小さなぼんぼりをたくさんつけたようなシロモジの花など、名前がわかるとより親しみを感じるのが不思議です。今月のたよりの花の絵で、この中からいくつか描かせていただいたのでぜひ探してみてください。

機織り

今月は八百津の古道具屋さんにてダーニングワークショップをさせていただきました。今回は村のお茶屋、添いさんがお茶とお茶菓子を担当してくださって、春を感じる会となりました。参加者の皆様もとても楽しんでいたようでほっとしました。
マルシェやカフェ、ギャラリー以外でのワークショップ開催は初めてで、勝手がわからず骨が折れました。正直こんなに大変だと思っておらず、もう無理と何度か思いましたが、皆様のご協力のおかげで何とか開催されました。本当に皆様ありがとうございました。

地域おこし協力隊になってから、ダーニングワークショップももう10回以上させていただいており、「いつもの動き」というか、ルーティーンのようなものができていたのですが、今回はそれが生かせず四苦八苦してしまいました。先述の戦争の話でもさせていただいたのですが、対話をすることは、どんなことをするにも重要なことだとつくづく感じました。

相手の意見を静かに聞くこと。自分の考えを感情的にならずにていねいに話すこと。感謝と反省を忘れない事。どれも正直難しいけれど、できることからひとつずつやっていきたいと思います。

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