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若水迎え
若水迎えは、元日の朝、第1番に行う行事です。「若水」とは、元日の朝早く新年初めて汲む水のことで、年神(別項で詳述します)に供えたり、家族がお茶をたてて飲んだりします。この若水を汲みに行くことを「若水迎え」または「若水汲み」といいます。
この朝、年男(別項で詳述します)は、午前4時ごろに早起きします。恵方(えほう)に向かって拝礼をし、年神棚をはじめ神棚、祖霊棚に神酒を供え、灯明を献じた後、緒(お)に白い和紙を巻いた草履(ぞうり)を履いて、井戸へ行き、注連縄(しめなわ)を張った新しい手桶に、新しい柄杓(ひしゃく)で若水を汲み入れます。
年男は、汲んできた若水を年神に供え、大晦日(おおみそか)の夜から大切に灰に包んで保ってきた火種をもとに、マッチを用いないで、「白がら」といって紙の原料として表皮を剥(む)いた楮(コウゾ)、それがないときは、豆がらを燃して囲炉裏(いろり)の火を起こし、湯を沸かして、家族揃っていただく御福茶(おぶくちゃ)(別項で詳述します)の準備をします。ごく一部に、まったく新しく火を起こしてこれらの準備をする家庭もあります。
若水はこのほか、元日の朝、家族が口を濯(すす)ぐことなどにも用います。
東白川村で若水汲みがどの程度行われているか、「広報ひがししらかわ」が昭和61年1月に行った調査があります。調査対象は小学校5年生を中心に4年生と6年生の一部を加えた86人ですが、それによると、若水汲みを行う家庭は全体の24%、そのうち、父親が行う家庭は80%でした。
今は、給水事情の変化にともなって、若水迎えという行事もすたれましたが、水道の蛇口をひねって最初に出す水を若水として、手桶もバケツを代用して、この行事を伝えている家庭もあります。
全国の他の地方では、若水を汲みに行く途中で人に会っても口を利かないという古風なしきたりや、汲むときに鏡餅や洗米を水神に供え「福くむ徳くむ よろずの宝 今ぞくみとる」などと唱えながら汲む例もあります。また、桶に入れて行った餅を2つに割って、1つを水神に供え、1つを若水といっしょに桶に入れて持ち帰るところもあるようです。