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花まつり
釈迦(しゃか)の誕生日と伝えられる陰暦の4月8日に、それを祝って、各寺院で行われる仏教行事を「花まつり」といいます。「灌仏会(かんぶつえ)」の俗名で、浄土宗でいったのが一般化されたといいます。現在は陽暦の4月8日に行われ、「降誕会(こうたんえ)」「仏生会(ぶっしょうえ)」「浴仏会(よくぶつえ)」「竜華会(りゅうげえ)」などの別名があります。
昔の東白川村では、この日、寺で花御堂(はなみどう)を作って、レンゲなどさまざまな花で飾り、水盤のなかに、釈迦の誕生したときの姿をかたどった銅製の仏像、誕生仏を安置し、甘茶(あまちゃ)をたたえました。参詣に訪れた人たちは、小さな竹の柄杓で甘茶を汲み、誕生仏の頭から3回そそいで拝みました。花まつりには、おもちゃなどを売る出店も多く、甘酒のサービスもあって賑わいました。寺から帰るときは、甘茶をビンなどに詰めてもらい持ち帰ったものです。
他の地方には、甘茶は飲む以外に、それで墨をすって、「ちはやふる卯月(うづき)8日は吉日よ神さけ虫を成敗ぞする」と書いて、その紙片をさかさまにして戸口に貼(は)っておくと、長虫(蛇)が家に入らぬという俗信があります。
花で飾った御堂(みどう)は、摩耶(まや)夫人が咲き誇る無憂樹の花の下で釈迦を生んだという藍毘尼園(らんびにおん)(釈迦の父王の離宮、今のネパールのタライ地方)をかたどったものであり、甘茶を注ぐのは、釈迦が生まれたとき9頭の竜が天から清浄な、香ばしい水を吐いて、釈迦に産湯を使わせたという伝説にしたがったものだそうです。
甘茶を用いるようになったのは江戸時代になってからで、甘露(かんろ)(仏教で、苦悩をいやし、長寿を与え、死者をよみがえらせるとされている霊液)になぞらえたものといいます。それ以前は、5種の香水(こうずい)を用いました。
アマチャは、ユキノシタ科の落葉低木で、ヤマアジサイの一変種です。東白川村にもわずかですが自生します。この若葉を採り、蒸して揉(も)み、乾燥させたものを煮出した甘い飲み物が甘茶です。ウリ科の多年草アマチャヅルを同様に処理して用いることもあります。
この行事は、今でも東白川村神土平の御嶽教白川協会でも行われています。
花まつりは、本来、仏教の行事ですが、仏教的側面からだけでは説明できないものが少なくないとする説があります。それは、この日、高い山に登って神を拝む風習が各地にあり、山の神の祭日にしている所もあり、田の神が山から降りてくる日だといって、麦飯を炊いて食べる地方があり、ウツギ、ツツジ、シャクナゲなどの花を長い竿の先につけて庭先に立て、神の依代(よりしろ)とする風習があるなど、全国各地に農耕を見守ってくれる神にかかわる習俗が少なからず存在するからです。